第四楽章 ~希望~

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4-4 スペシャルな独り言

成田)武枝さんに「それが成田さんですから」と言っていただけるとしたら、「それが」ってなんだろうと考えてしまいました(笑)。私は決して、人並み外れた強い人間ではありませんし、うろたえますし、声を上げて泣くこともあります。でも、どん底で現実を一度しっかり受け止めたら、そのあとの切り替えと立ち直りだけは人並み外れて速いかもしれません(笑)。だから心が落ちている時間の私を知る人は少ない(笑)。

武枝)全くその通りです。

今でこそ、心が落ちて、また這い上がってくるプロセスをほぼ同時進行で目の当たりにしているけれど、以前、一緒に仕事をしていた頃は、自力で平常心に戻した後に最悪だった話を伝え聞くわけだから、そこにはもう心が落ちている成田さんの影すらなかった! 

成田)決して楽観主義ではありませんし、現実逃避もできません。自分に起こっていることを痛いほどに受け止めています。瞬間的には心臓がバクバクしたり、息苦しいほどの緊張感で呼吸が浅くなっています。それでも、その苦しみの正体を、一度全身全霊で感じる時間が、私にはどうしても必要なんです。顔を上げるのはそれからです。

私は、コーチングでも、よくクライアントの「感情」を扱います。「何を”考えて”いますか?」ではなく、「何を”感じて”いますか?」を。人とロボットの大きな違いは、人には「感情」があるという点ではないでしょうか。それは血液のようにいつも流れていて、無視したり止めたりできないものです。「感情」が「行動」を引き起こすといっても過言ではないでしょう。でも、情報過多の時代にあって、昨今は多くの人が自分の感情に蓋をしたり、データや情報優先で、物事を判断しようとしていないでしょうか?こんな時代だからこそ、どんな感情も恐れずに、血液のようにさらさら流しておくことが必要だと思っています。「感情」は「直感力」と繋がっていますから。

武枝)感情を血液に例えるととても分かりやすいですね。

血液が淀んで老廃物が溜まり、血管が詰まって流れなくなった時の状態を想像すれば、感情に蓋をすることがどれだけ空恐ろしい事態を招くかが、よ~く理解できます。

成田)人は、信頼できる人に、自分の感情について素直に話せると、必ず自分で突破口を見つけ、動き出せると感じています。私は、このやり取りを初めて以降、武枝さんに電話をしては、いつも感情を受け止めてもらっていますね。話しながら、どんどん自分の言葉が変わって行き、最後はいつも二人で笑ってる。感謝でいっぱいです。

そして、「それが、成田さんですから!」の「それが」とは、感情を切り替えるために自分にかける「スペシャルな独り言」にあるかもしれません。最近はもっぱら「通り過ぎた女神様さえ、振り返らせてみせましょう」ですね。このやり取りの中で生まれた言葉ですが、私が私らしく立ち上がり、美しく微笑むことのできる魔法の言葉です!「自分に効く言葉を持つ」ことの大切さを痛感します。

武枝)「自分に効く言葉を持つ」って、素晴らしい提言!

どんなにひどい目にあっても、その人らしく立ち上がり、美しく微笑むことのできる「スペシャルな独り言」。たぶん、その言葉を考える心の余裕を持つことが、立ち直る力や、やがては笑顔を呼び込むのでしょうね。

このやり取りで、成田さんから感謝の言葉をもらってとても光栄ですが、それはお互いさまで、テニスに例えれば、感情という名のボールでラリーを続けているうちに、今までに持ち合わせていなかった新たな自分の球種(感情)に気づけた。一番不思議なことは、自分が受けていない治療の痛みや苦しみを自分の感情の一部に取り込めたこと。それは私にとって大きな意味があります。

成田)丁度この頃、やり取りを公開するサイトのタイトルや見出し、プロフィールをどうするかなど、新しいステージの準備が進んでいましたね。病気に対する不安より、その作業にワクワクしていました。でも、仕事やしたいことを前に進める一方で、「がん細胞が点在していた」という現実を受け止め、3月にセカンドオピニオンを受けた、あの「移植設備のある大病院」で治療することを視野に入れ始めていました。

主治医のO先生は、「セカンドオピニオンと治療する立場になるのとでは対応も変わると思います。」とおっしゃいました。

自分で初診の予約を入れ、1ヶ月後の7月9日、私は主治医のO先生の紹介状とI先生に切除していただいた組織の検査結果を手に、再びあの大病院を訪れました。治療を決意しての初診の日です。

武枝)切除した組織の検査結果を5月20日に聞いた後、どん底に突き落とされながら、よくぞ立ち上がりましたよね。考えてみたら、何度そんな目に遭わなければいけないのでしょう。

現実を受け止めたら、そのあとの切り替えと立ち直りだけは人並み外れて速い成田さんとはいえ、立ち上がるための「自分に効く言葉を持つ」成田さんとはいえ、今回ばかりは心配しました。それは、骨髄移植をすべきというドクターの言葉を受け止められないままに、治療を決意しなければならない、矛盾した現実に直面してしまったのですから。

2人で、「選択肢の中に選びたいものが何もない!時間よ、止まれ」って電話をしながら叫び合ったよね。でも、刻々と時間は過ぎて、7月9日を迎えてしまった。

 

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