終楽章〜感謝〜

§ はじめの方はこちら

5-2 祈りの力

成田)すごい偶然がありました!「5-1あきらめない心」の末尾に、蘇生エネルギーのイメージを、「こんこんと湧き出る深い青の美しい泉」と表現しました。そのやり取りを武枝さんに返信したすぐ後に、沖縄に移住されたリクルート時代の上司が、私の寛解祝いにと素敵な贈り物を持って来てくださいました。なんと!それは、深く美しい青色の大皿だったんです。

実は、私は子供の頃から「青色」が大好きでした。最初は父の影響だったかもしれません。「万寿美には青が似合う」と言って、赤やピンクの可愛い色の服は着せてもらえませんでした。でも、いつしか自分でも「青」がしっくり馴染むようになり、気がつけばインテリアやアクセサリーにも、無意識に青を選ぶことが多くなっていました。親の刷り込みって怖いですね(笑)

ただ、「青」には数え切れないほどの色あいがあり、彩度、明度によって変化することがわかってくると、ますます魅了されていきました。寛解のお祝いにと頂いた大皿の”青”は、そんな私の心を映し出すように様々な青の世界を見せてくれます。大地からこんこんと湧き出す泉のように澄んだ水色。銀河で輝く地球のように鮮やかな瑠璃色。深く静かな海の底のような紺碧。夜明け前の宇宙(そら)のような群青。
一枚のお皿から壮大な生命の鼓動が伝わって来ます。「夜明けの来ない夜はないさ」という、松田聖子さんの歌「瑠璃色の地球」の一節を思い出しました。さらに、その大皿を手に取ると、ずっしりした重みから、作者の手の温もりと優しさが伝わってきて涙が溢れました。お二人の想いとともに沖縄から我が家に来てくれたその大皿に、「青の涙」というタイトルを付けたいと思います。

この大皿の作者は、ニュージーランド生まれで沖縄在住の陶芸家ポール・ロリマーさんです。沖縄に移住された元上司とお二人で、私の写真を見ながら選んでくださったそうです。私のことが見えているのかしら!と思ってしまいました。今はベッドサイドに置いて、毎日パワーをいただいてます。

ところで、「元上司」のことは、今後「Hさん」と書かせて頂きます。リクルートという会社は、昔から「社長」「部長」「課長」などと呼ぶ習慣がなく、誰もが名前で呼び合っていました。もちろん部下に対しても「成田さん」でした。「くん」や「ちゃん」付けで呼んだり、もちろん呼び捨てにされた記憶もありません。こんなところも、当時としては稀有な企業だったでしょうね。

さて、そのHさんは、私をリクルート(当時の「株式会社日本リクルートセンター」)に採用してくくださった恩人です。40年ほど昔の話になりますが、その瞬間のことを今も鮮明なカラー映像で思い出せるほど、私にとっては人生を左右する衝撃的な出会いでした。人生はどんな人に出会うかで大きく変わるのかもしれませんね。

武枝)「青の涙」!いいですねえ。

成田さんをリクルートに採用して下さったHさんと、成田さんとは一面識もない陶芸家の方が膝を突き合わせて写真を眺め、どんな会話を交わしながら「青の大皿」を選ばれたのでしょうね。

「成田さんは、何がしたいのかわからなくて、リクルートを受けたのですがね、やがてやりたいことを見つけて巣立っていきました」というHさんの説明を黙って聞いていたポールさんから、「この方から、深~い青色の石”ラピスラズリ”の輝きを感じます」なあ~んて言葉が飛び出して、じゃあ、寛解のお祝いは「青の大皿」ということに。そして、ぽつり、「成田さんにはね、もっともっと生きていてもらわなくちゃあ」とHさんがおっしゃる……などと、私は勝手に想像して楽しんでいます。

ラピスラズリって、調べてみると、世界でパワーを最初に認識された石で、「最強の聖石」とされているそうですが、まさに、その「青の大皿」には、Hさんの深い想いと、作家さんの一念の凝結されたエネルギーが詰まっていることでしょう。

人生での出会いって、いつものことながら不思議ですよね。ポールさんが成田さんの写真を見ただけで本質を捉えられるなんて、これは、驚きでもあり、ある意味、必然のようにも思えます。それを考えると、まだ出会っていない人で、この先、自分にとって重要な存在となる人と、実はすでに繋がっていて、いつか出会うのではないかという予感があります。それをイメージするだけでもワクワクしてきます。

成田)相変わらずの武枝さんの想像力に大ウケしました(笑)ホント!どんな会話をしながら選んで下さったのかしら。私のいないところで私に心を寄せながら話し合ってくださっている人がいるなんて!その様子を想像するだけで暖かなエネルギーが満ちてきます。

それにしても、いくら想像力豊かな武枝さんとはいえ、どうしてHさんと私の昔の会話をご存知なんだろう?と不思議に思っていたのですが(笑)そういえばfacebookに、青の大皿の写真とHさんと出会った時のエピソードを投稿していましたね!

武枝)ポリポリ(^^ゞ
豊かな想像力でもなんでもなくて、成田さんからの情報をそのまま使っただけのことでした~
成田)武枝さんとは、何度も、同時に同じことを感じる経験をしていますし、電話やSNSメッセージでもやりとりしているので、今話していることが、想像の世界なのか、どこかで話したことなのか、私も時々わからなくなります。でも、実はそんなことはどうでも良くて、想像も現実も含めて五感に感じるやりとりの全てが一つに溶け合ってることが心地良いのですよね(笑)

改めて、Hさんのことを少しご紹介させて下さい。その昔、リクルートに入社したい明確な理由も目標もないまま、直感に導かれれるように会社訪問をしました。その時ご対応下さったのが、当時人事担当課長だったHさんでした。包み込むような優しいお声と話し方で、ついつい進路に悩んでいることを正直に話す私の目を真っ直ぐに見つめ、言葉を遮ることなく受け止めて下さいました。そして、こうおっしゃいました。
「成田さん、人生はいつからでもやり直すことが出来ます。
勉強するにもお金が必要ですから、やりたいことが見つかるまでリクルートで働けばいいじゃないですか!うちは夢のある人が欲しいんですよ。一生ここにいますというような人は採用していません」って。
当時から一般的な価値観で自分を測られることや、常識の枠にはめられることに抵抗があった私は、このような企業が存在することに驚くと共に感動しました。入社してみれば、上下に関係なく誰もが言いたいことを言い合い、やりたい事を提案し、皆さんイキイキと自分らしく働かれていて、”組織にいながら自分の人生を生きている人達”に見えました。まさに今でいうダイバーシティ(多様性)が実現されていて、年齢、性別、学歴、国籍、宗教、価値観など、全てにおいて個人が尊重され、お互いの強みを生かしてお仕事をされていました。

武枝)ダイバーシティ(多様性)が実現されることはあくまで理想形であって、実際にそこまで徹底できている企業があるなんて、にわかに信じがたかったのですが、成田さんは、それぞれの社員が、思う存分、自分の力を発揮できていることを身をもって知っているわけですからね。

人事担当課長だったHさんの言葉「成田さん、人生はいつからでもやり直すことが出来ます。勉強するにもお金が必要ですから、やりたいことが見つかるまでリクルートで働けばいいじゃないですか!うちは夢のある人が欲しいんですよ。一生ここにいますというような人は採用していません」が、社風を十分に物語っていますね。

成田)そんな素晴らしい企業なのに、私はたった3年で退職し、テレビキャスターへの道を進むことになりましたけれど、Hさんとの出会いとリクルートでの経験は、その後の私の生き方・働き方に大きな影響を与えたと思います。それは、「自分の気持ちに正直であること」「自分に誇りを持つこと」「答えは自分の中にあること」。そんな軸を持つことが出来たのだと思います。

Hさんも、武枝さんも、私にとって必然の出会いだったからこそ、人生の大切な節目でまた再会したのだと思っています。いえ、再会したというより、会っていない時間もず〜と繋がっていたのだと思います。これは、偶然ではなく、”何者かのシナリオ”だと思わずにいられません。この言葉なきシナリオは歳を重ねなければ見えないものですね。それだけでも、生きていることの意味と価値を感じます。

武枝)確かに、成田さんの言葉通り、”会っていない時間もず〜っと繋がっていた”と実感しています。そして、どんな時も成田さんの軸はブレないだろうという確信がありましたが、その資質はHさんとの出会いとリクルートでの経験によって、より揺るぎないものになったのですね。

成田)軸を持ったと言っても、当時はまだ自分の在り方がぼんやり見えただけでしたけれどね。でも、そのお陰で良きも悪しきも、常識や人の価値観より自分の心の声に従おうという気持ちだけは強くなった気がします。当然、前例のない航海は波も風も強くて、順風満帆とはいきませんでしたけれどね(笑)

武枝)「前例のない航海」は成田さんらしくて痛快でしたが、ただ心配だったのは、諺では「便りのないのは良い便り」と言われるけれど、成田さんの場合は逆で、連絡が途絶えた時ほど大変な時期なのではないかということでした。まさか、大病と闘っていたなんて……

成田)はい!またまた、何者かが私の軸を試されたみたいですね。魂の修行のために与えられたシナリオのようにも思えてきます。

武枝)そして、20数年ぶりに会ったのですが、ず~っと繋がっていたという想いがあるから、私も空白の時間を全く感じなかった!しかも、このやり取りを始めてから、二人が同じ時刻に、お互い同じことを想っていたということが頻発しているのよね。これも偶然とは思えません。”魂の回線”というものがもしあるのだとしたら、その道筋で繋がっているのではないかと。

そして、”何者かのシナリオ”を感じるようになっているという成田さん!《この言葉なきシナリオは歳を重ねなければ見えないものですね。それだけでも、生きていることの意味と価値を感じます。》という成田さん!その言葉を聞いて、私はちょっと壮大すぎるかもしれない想像を膨らませています。成田さんはその”何者か”とも魂の回線が繋がってしまったのではないか!と。

成田)魂の回線とは!!なんと言う想像力でしょう!自分で「何者かと回線が繋がった」と言うのは、かなり厚かまく思いますが、人間には誰しも、そんな瞬間があるのかもしれませんね。

武枝)言葉なきシナリオはもちろん歳を重ねなければ見えないものではあるかもしれませんが、たぶん、それだけではない、成田さんが大事にしてきた何かの力があるような気がします。更にやり取りを進めていくうちに、その何かが浮かび上がってくるかもしれませんね。

成田)「再発がんが消える!」という奇跡を起こしたものはなんだったかを最近よく考えます。それは一つではなく、医療の進歩、主治医との信頼関係、入院生活をサポートしてくださった人達、ユーモアや陽気な気持ち、夢、諦めない心、自分の細胞たちの頑張りなど。これまで「キセキの対談」に書いてきた色んな要素が絡み合ったと思いますが、もう一つ、「祈りの力」も大きかったのではないかと思っています。それは、自分一人の祈りではなく、多くの人の愛ある祈りがあったことを感じずにはいられません。

これまで誰とどんな出会いをしてきたかを思い出すとき、愛を持って祈ってくださった方々の、目に見えない力がいかに大きいかを感じています。改めて素晴らしい出会いに心から感謝しています。

一方で、復活後、ご縁のなくなる人もありましたけれど、以前ほどそのことに心煩わされることは少なくなりました。それも、必然のシナリオなのでしょうか。ならば去る者追わずといきましょう。

武枝さん。私は無宗教ですが、私が感じた「祈りの力」についてもう少しやりとりさせて下さい。

武枝)「祈りの力」かぁ~!

更にやり取りを進めていくうちに、浮かび上がってくるかもと、つい先ほど書いたばかりなのに、すぐに立ち上がってきましたね。

成田)そうそう!そこがこの「キセキの対談」ならではだと思っています。読者の皆さまには、そこを感じながらお読みいただけると嬉しいですね。記事タイトルも後からつけているくらいで、構成や想定問答は一つもありません。ほら!また予定していた「祈り」の話から少し外れていますが(笑)武枝さんのおっしゃる「やりとりを進めていくうちに、浮かび上がってくる」ものにこそ真実がありますから、このまま続けさせてくださいね。

私は、「やりとりを進めていくうちに、浮かび上がってくる」ような対話がインタビュアーの究極の在り方だと思っています。決めた質問をするだけなら、答えも想像の範囲を出ないでしょう!私も若かりし頃、自分の語彙不足や質問の稚拙さに悩んだことがありました。でも、私は「上手な話し手より、最高の聴き手になる」と言う目標を持っていたので、ある時気がついたんです。若い私が一流の相手と対等に向き合えないのは当然。背伸びするのでも、へりくだるのでもなく、等身大で向き合えばいいのだと…。

聴き手がありのままの自分の言葉で質問すれば、相手も深いところにしまいこんでいたものが浮かびあがってくるのではないでしょうか。そこに共鳴が起こり、波長が合ってくれば、年齢や肩書きを超えた「生きた対話」が生まれるのだと思います。私はこういうインタビューが好きです。だから、武枝さんとの言葉のやりとりで、私の中の何かが「浮かび上がってくる」のは至極当然のことです。

さて、浮かび上がってきたことが長くなりましたが、実は私は、これこそが、「祈り」ではないかと..書きながら、今、思いました!

武枝)成田さんの心の声が言葉になっているから、琴線に触れて、響き合って、次のメロディーに導かれる、な~んちゃって!

それにしても、やり取りの中で、深いところにしまい込んでいたものが浮かび上がり、それによって「祈り」の”新解釈”が導き出されたなんて……震えます。

成田)昨年、武枝さんとのこのやりとりの最中に「がんが再発」しましたよね。でも、ここで魂レベルの対話をしていたから、私は自分の在り方にブレずにいられたと思います。「自分の気持ちに正直であること」「自分に誇りを持つこと」「答えは自分の中にあること」。

そして、武枝さんと、たった今をリアルに共有し共鳴し合えたことは、さらに大きな生きる力になりました。

手を合わせて願いごとをするだけが「祈り」ではないと思います。「苦しい時の神頼み」的なものではなく、現実を受け入れつつも、自分の内なる声を信じる気持ちが祈りに通じるのではないかしら。そして同じような気持ちで私を信じてくださった皆さまの深い愛もまた、無意識の「祈り」となって私の生命の真ん中と繋がっていったように思えるんです。

なんだか精神論ぽくなりましたが、病気と向き合う時には「心の在り方」はとても大切だと思います。だからこそ、病と闘っている者にとって、どんな言葉が心に効くのか、いのちの真ん中に届くのか。武枝さんと対話を続けたいと思います。

武枝)今まで、「祈り」について、 これほどまでに心を突き動かす言葉で説いた辞書も人物も、私は知りません。

いつもお読み頂きありがとうございます。
毎週水曜日に更新してまいりました「生(いのち)を見つめて〜キセキの対談〜」

これからは、不定期更新となります。
更新の際には、今までどおりフェイスブックでお知らせ致します。

引き続きお読みいただけますと幸いです。
ぜひ!フォローをお願い致します。

前のページ

次のページ


※ 記載内容に関するご質問・個人的ご相談には対応しておりません。