第三楽章 〜生還〜

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3-3 無理なく「勝手に筋トレ」法

武枝)成田さんって、病気をしたことすらもプラスにシフトしちゃうんですよね。くよくよしたり、嘆く方向を着地点にはしない。大病を通して何にも代えがたいプレゼントを受け取り、《「生き方が声に現れる」「地声こそ生き様が伝わる」》という核心を掴んで、これから笑声のプロとして進んでいくダイナミズムに拍手を送りたい、ですね。

成田)ダイナミズムですか!力がみなぎる有り難い言葉です。

さて、ガリガリに痩せた体についてもお話ししますね。とりあえず、入院前に着ていた洋服や靴はブカブカで、全て着られなくなりました。退院後、量販店で初めて買ったブラックジーンズは、大人用のSサイズでも大きいくらいでした。

武枝)Sサイズでも大きいくらいでしたか。「あらら~!」と苦笑している成田さんの顔が目に浮かびます。
声を復調させるのはその道のプロですからお手のものだと思いますが、退院からわずか1年余りで溌剌とした体をどのようにして甦らせたのか、成田さん独自のレッスン・テクをまたまた編み出したのでしょうか。

成田)武枝さんをがっかりさせるかもしれませんが、一言で言えば、レッスンテクなど何にもありませんでした。私はただ、ガリガリでふらふらの自分の体を見てこう考えました。
「せっかくここまでダイエット出来たのだから、体型を変えるチヤンスだわ!そうだ、たるんだ皮の下に筋肉をつけよう!」って。そのイメージは「目指せ!アスリート体型!」でした。
多分、赤ちゃんが初めてつかまり立ちし、よちよちと歩くことを覚えた時の喜びってこんな感じじゃないかしら。私はただただワクワクしていました。

でも、トレーニングジムに通ったり、激しい運動をしたわけではありません。簡単で、楽しく、自分にとって心地よいことを、少しだけ毎日継続しただけなんです。退院(復活)から間も無く2年。体重はその当時から2キロ増えただけで、体のシワはなくなり、皮膚にも以前より張りが出て、無駄な脂肪のなくなった体は軽やかで、入院前のように階段で息切れすることもありません。自分では、体力も見た目も10歳若返った気分です。もちろん、若作りなどするつもりはありません。ありのままの今の自分が誇りです。

武枝)がっかりするどころか、大きなヒントを与えられて、私は快哉を叫びました。「トレーニングジムにも通わず、激しい運動もせず、簡単で、楽しく、自分にとって心地よいことを、少しだけ毎日継続しただけ」って。それで、二の腕のたるみも筋肉に変えてしまい、見事「目指せ!アスリート体型!」をものにしている!しかも、このテクニックは、ふらふらの体でもできるってことを、成田さん自身が身をもって証明しているんですもの。今までになかったでしょう。体力ZEROの人でもアスリート体型になれるトレーニング法!なんて。私も教わりたいわあ。

成田)いや〜!武枝さん、お教えするほどでもなくてお恥ずかしいのですが、私が行っていることを一言で言えば、「勝手に筋肉が鍛えられる方法」です。なんだか怪しいですよね。でもこれは、私の体で実験した事実です。どんなことの習得でも同じだと思うのですが、頑張ってトレーニングすれば誰にでも一時的な変化は起こるでしょう。だから多くの人が、結果を求めて「頑張りすぎる」と私は思うんです。結果を急ぐとロクなことはありません。体を壊したり反動がきたり…。そして続かなくなってトレーニングを止めれば、すぐに元に戻ってしまいます。

私達にとって本当に難しいことは、”トレーニング”をすることではなく、”習慣化”することではないかしら。人によるかもしれませんが、私は怠け者なので厳しいトレーニングは続きません。トレーナーにお尻を叩かれ、同じ方向を向き、青筋立ててみんなで頑張るのは苦手です(笑)気が向いた時に、自分のペースで、気持ち良く体を伸ばしたり緩めたりするのが好きです。声のレッスンでもダイエットでも同じだと思うんです。無理せず細く長く継続できたことは、結果的に自分のものになっている気がするんです。楽しんでいたら、いつしか喉が開くようになっていたとか、気がついたらサイズが変わっていたというように。

武枝)いいですね、いいですね。「無理せず細く長く継続できたことは、結果的に自分のものになっている」って。私も トレーナーにお尻を叩かれ、同じ方向を向き、青筋立ててみんなで頑張るのは苦手です。
例えば「すぐに~できる~本」って、よく売れているけれど、私などは能力的にも集中力的にも最初から無理だと思っているので、買って試したことは一度もありません。

成田)「すぐに〜できる〜」の方法が本当にあるなら、とっくにそんなタイトルの本はこの世からなくなっているはずですよね。でも同じようなタイトルの本が内容を変えては売れ続けているという事実がその本質を物語っています。「笑声®レッスン」では、「すぐに〜できる」はお約束していませんが、普段の会話そのものが楽しく気持ちよくなるような声の出し方をお伝えしています。呼吸することや声を出すことが気持ちよければ、日常生活シーンの一つひとつがトレーニングを兼ねることになると考えています。

武枝)トレーニングといえばスパルタ的な先入観念があるのか、往々にして指導する側も頑張りすぎる傾向にあるような気がします。成田さんのように、楽しく気持ちよくさせる手ほどきって、却って難しいのかもしれません。それって「コツをつかむ」コツを誘導することでしょ。
で、コツをつかむのコツの語源を調べたら、コツは骨を意味し、体の中心にあって、体を支える役目をしていることから、人間の本質や素質を意味していて、そこから、物事の本質をつかみ、自分のものにすることを、コツをつかむというようになったとありました。

成田)うわ〜!すご〜い!コツの語源は「骨」なのですね!初めて知りました。納得です。「コツを掴む」という意味が、今、身体的感覚で理解できました。

武枝)「身体的感覚で理解できました」って実感の仕方が素晴らしいですね。まさしくコツを掴んだ時に骨まで震えるようなゾクッとする体感ですね!

成田)私が行っている「勝手に筋トレ!」も、同じ考え方です。コツは、誰もが毎日行っている生命活動を少し変える、「食べる」「呼吸する」「立つ」「歩く」など。これらを少し変えるだけで、勝手に体型が整ってくると感じています。

例えば、電話コーチングをするときは、デスク横に姿見の鏡を置き、時々姿勢をチェックしたり、腹圧を入れたり、猫背にならないよう肩を上下させたり後ろに回したりしています。もちろん受話器ではなくヘッドセットを着けて正しい姿勢で話しています。座り姿勢を整えるだけで骨盤が立ち背筋が伸び腹圧も入ります。よく「成田さんは姿勢がいいですね。疲れませんか?」と言われますが、私にはこの方が楽です。背筋が伸びていると、呼吸が深くなって安定した声が気持ちよく出ますから。

歩くときも、腹圧を入れ、手を後ろに振って胸を張り、少し大股に歩くようにしています。

また、パソコン仕事をするときは、無表情になりがちなので、時々「あ・え・い・お・う」なんて表情筋を大きく動かしたり、口角を少しあげるように心がけています。私は、「口角は感情のスイッチ」と言っているのですが、上げるか下げるかで、気持ちまで変わるから不思議です。

武枝)「口角は感情のスイッチ」か~!またまた格言が飛び出しますねえ。

成田)でも、口角を5ミリ上げているのは辛いですし、時に不自然です。モナリザの微笑をイメージして、3ミリ程で十分です。不思議と目元の険しさが取れて、心も頭も柔らかになります。口角が下がる原因の一つは、加齢による頬の筋力低下ですから、無表情だと、どうしても不機嫌顔に見えてしまいます。年を重ねるほどに、常に口角をちょっと上げる意識を持つことをおすすめしています。

武枝)「モナリザの微笑をイメージして、3ミリ程で十分」ですか~なるほど!やってみよう。程遠くても、イメージしてその気になるのは自由だ~!

成田)私や武枝さんのような食いしん坊にオススメの「勝手に顔トレ」もありますよ!これは、口角と顎のラインをバッチリ引き締めます。
私たちは食事するとき、ほぼ無意識にモグモグ食品を噛んでいませんか。そこで少し意識して、左右の奥歯を意識しながらしっかり食品を噛みしめます。口を開けると品無くなるので(笑)唇は閉じて左右バランスよく元気にご飯を食べます!口角と顎ラインが閉まるだけでなく、気分が上がり、生命エネルギーも蘇ります。野生動物の食べ方ってそうじゃないでしょうか(笑)
ついでに
首筋を伸ばすようにして噛めばリンパの通りもよくなりそう。はい!食事しながら勝手に筋トレで〜す。

もう一つ、私の朝の習慣をご紹介します。目覚めたら、まずベッドで仰向けのまま、両手足を上にあげ、力を抜いて手首足首をぶらぶら振ります。これを「ゴキブリ体操」と呼んでいます(笑)裏返ったゴキブリみたいだからですが、四肢末端の血液が流れるからでしょうか、ベッドから起き上がりやすくなります。それから、まず部屋の窓を全部開け放ち、淀んだ空気を入れ替えます。歯磨をしたあと、ベランダで腹式呼吸をします。

一呼吸ごとに体が覚醒されるのがわかります。ちなみに表情筋につながると言われる横隔膜は、呼吸することでしか動かせないんです。しっかり動かしてから「顔の体操」をします。それから部屋の中で10分程度、その日の気分で「ストレッチとスクワット」をします。声を使う仕事がある日は「発声練習」もします。これが朝の習慣です。ねっ!気持ち良いことをしてるだけでしょ。これだけでエネルギーが満ちてきて、体が喜んでいる気がしますので、継続できるのだと思います。
日常の呼吸、食べ方、歩き方、立ち方、姿勢、会話の全てが筋トレになります。特別なことは何もしていません。「目指せ!アスリート体型」は言い過ぎですが、スッキリした体型は維持できていると思いますよ。

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