第二楽章 ~心模様~

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2-12 山を越えて見えた景色

成田)国際資格の受験勉強していたことをドクターはご存知なかったと思います。さらに、秘密はもう一つありました(笑)。実はこの頃から談話室の片隅でクライアントと電話コーチングをはじめていたんです。入院しながらできる仕事があるって幸せですよね。声はまだまだ出にくかったですけれど、体の底からエネルギーが湧いてくる時間でした。

さて、すべての抗がん剤投与も無事に終え、免疫抑制期間に入ると、風邪をひいたり、悪いウイルスに感染しないよう気をつけながら、「さぁ、いよいよ産道を抜けるぞ!復活するぞ!」って、心と体を整えていました。ところが今回は、白血球を増やす皮下注射をしても、なかなか白血球が増えなくて、12月19日の夜、とうとう何かのウイルスに感染したのか、高熱を出してしまったんです。
そういえば、前日、病室に他の患者さんのご家族が3歳位の子供さんを連れてこられてたんです。気になったのでベットのカーテンを閉めてウトウトしていたのですが、ふと目をさますと、その子が私のベット横の飲みさしのジュースに手を伸ばしていました。

10歳以下の子供はどんな菌を持っているかわからないので、この病棟には入れないはずなのですが、土日はスタッフも少なく、お見舞いの人が連れて入られたようです。この子のせいかどうかはわかりませんが、恐いですよね。早速、熱を下げる点滴をし、たくさんの血液を採取、培養して原因菌を調べることになりました。え〜!退院まで、あと6日だというのにぃ…..。

武枝)え~!そんなことってありですか?この期に及んで、何ということでしょう。お願いです。もうこれ以上、成田さんを苦しませないでください!お願いです。

成田)何者かがまたしても私をお試しになりましたね。「本当に私を信じているのか!」とでも言うように。そこで、O先生に聞きました。「どうしたらクリスマスに退院できますか?」と。

「今の状態では年内の退院は厳しいと思いますが、3日で熱が下がれば、お正月は家で過ごしてみましょうか。」と。
「わかりました。では3日で熱を下げます。」と、ドクターに言ったというより、私を試してきた何者かに対して、「あなたを信じる」と宣言しました。
すると、何ということでしょう!翌日、熱が下がったんです。これは偶然なのでしょうか。高熱の原因も結局わからないままでした。そして、ついに、待ちに待った退院許可が出ました。

武枝)《何者かがまたしても私をお試しになりましたね。「本当に私を信じているのか!」とでも言うように、》って。

ほんとに何回試したら気が済むの!と言いたいぐらいですが、それを受けて立つのよ、成田さんは。

そして、そのたびに願った通りの扉がひとつひとつ開いていく!なぜか、改めて強調すると、成田さんの「信じる力」なのよね。ただし、決して加護や救済を最初から当てにして祈る信心ではない。底力の発揮できる自分を信じ、まず、自分の力を出し尽くす!その上で、後は不可思議な力を信じ、委ねる覚悟が突き抜けています。

《私を試してきた何者かに対して、「あなたを信じる」と宣言しました、》なんて、伊達や酔狂では言えませんから。

退院許可は、つまり、“不可思議の力”を成田さんに適用してよろしいという許可が天から下されたということなのでしょう。

成田)クリスマスイブの夜、病院での最後の夕食に小さなクリスマス・ケーキが添えられていました。人生で、あんなに甘く優しく美味しいケーキを食べたことがありません。
チームのドクターや看護師さんが次々に病室に顔を出してくださって、「成田さんの退院は嬉しいことだけど、寂しくなります」と祝福してくださいました。

緊急入院した日に迎えてくださった女性ドクターも、「成田さんとお話しできて楽しかったです。私ももっと医師としての力をつけておきます」とおっしゃってくださいました。翌朝、看護師さんや看護助手のハンサムウーマンHさんとハグをして、同室の患者さんに見送られ、私は退院しました。

2015年12月25日クリスマスのことです。

その夜はもちろん!グラス一杯だけのシャンパンで自分に乾杯しました。その喉ごしは、生きている実感そのものでした。

武枝)ああ、考えてみれば生きながらにして生きている実感を味わうことって、我ながらないなあ。生きていることのありがたみも感動も薄れ、豊かな気持ちを感じる動物脳も鈍くなっている。底力があるのかないのか自覚しないままに、生きる時間を潰していっているのかもしれません。なんて勿体ないこと!

もとより研ぎ澄まされた感性の成田さんが、この大病を通して、獲得したものは計りしれません。一瞬一瞬生きている実感と喜びを味わいつくしてていくだろう、これからの成田さんを想像しただけで、心底、嬉しいです。改めて、乾杯!ですね。

成田)武枝さん、ありがとうございます。乾杯!

病気は、私にたくさんのことを教えてくれました。山登りの途中は自分や仲間を信じて一歩一歩進むしかありませんが、山を越えて見えたものは、「愛と感謝」が広がる素晴らしい心の景色でした。武枝さん、2017年の最初の年賀状は、そんな清々しい気持ちで書いた、”新たな成田万寿美を生きるぞ宣言”だったのです。

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